早稲田近辺の食べ物屋さん

私は中高と早稲田にある中学高校に通い大学も早稲田。単純計算すれば3・3・4で10年間のはずですが、大学には6年間(つまり2年間留年したわけです)通ったので、計12年もこの町をふらついていました。
 というわけで早稲田の町を知り尽くした私が今回は、「早稲田近辺の食べ物屋さん」を紹介したいと思います。早稲田駅はお隣りの高田馬場駅とは違い、大きなビルなどまったくない雑然とした下町です。「マクドナルド」や「ファミレス」も一軒ずつしかありません。ほとんどの学生は学食か個人経営の飲食店で昼ごはん(人によっては晩ごはんも)を食べるわけです。大学といえば学食というイメージがありますが、早稲田の近辺には安くておいしい飲食店がたくさんあり、今日はそれを紹介したいと思います。

地下鉄早稲田駅から歩いて30秒のところに「メルシー」というラーメン屋さんがあります。当時で360円という破格の値段もさることながら、その味が麻薬的で1度取りつかれると抜け出せなくなります。それこそ12年の間に何百回と通うことになってしまいました。大学時代の友人に会うと必ず「メルシーに行きたい」という話になります。煮干しによる一点突破の味で、お店の付近には煮干し臭が漂っていて、朝は猫が集まってきてニャーニャーと騒ぐほどです。私はラーメン好きで多くのラーメンを食べてきているのですが、これ以上の煮干しの味がするラーメンは食べたことがありません。
文キャン(文学部のキャンパス)の近くにはカレー専門店の「メーヤウ」があります。タイの地方の名前らしいですが売りはインドカレー。とにかく辛くて食べ終わった後はでまっすぐ歩けないようになります。ふらふらしているところを知り合いに会って、「大丈夫?」と心配されたこともあります。この付近でよろよろと歩いている人がいたら、これは「メーヤウ」でインドカレーを食べたんだなと思って間違いありません。

早稲田通りを高田馬場方面へ行くと両脇は古本屋ばかりになります。なんと40軒以上あるそうです。大学の授業ではその講義をしている教授の著作を使って授業をするケースが多く、つまりその本を学生は買わなければいけないのですが、これらの古本屋さんには、先輩達が買ったそれらの本が出回っており、自分はいつも古本屋で手に入れていました。
しばらく行って明治通りと交差する辺りはラーメンの激戦区で、「一風堂」や「天下一品」といったチェーン店に加え、「ティーヌン」というタイラーメンの店や味噌ラーメンが有名な「えぞ菊」があります。そしてここには「がんこらーめん」の総本山がありました。
この「がんこらーめん」は看板も暖簾もなく、牛の顔の模型が店先につるしてあれば営業中という合図になっていました。当時はまだネットも普及しておらず、口コミ等で予備知識を持っている人以外にはそこがラーメン屋とは分からない、というか「店なのか」すら分からない怪しい所です。すごくおいしいと評判になったので勇気をだして入ってみたのですが、いきなり「で、今日は悪魔ラーメンしかないけどいいかい?」と言われました。「いや初めてなんですけど」とおそるおそる言うと、「今日はふつうのラーメンは出さない悪魔の日であり、店主が客の受けを気にせず作りたいものを作る日」なのだそうで、スープを全部飲み干せるようなラーメンはスープが薄すぎてダメだ、スープは沸騰するくらい熱くなくていけない、と滔々と店主のラーメン哲学を聞かされました。話してみると怖い感じはせず(若いころはボディビルをやっていたそうですごい体をしています)情熱を持っている人だなと一発でファンになってしまい、月に2~3回は通っていました。幸か不幸か私はその後悪魔の日に当たることはなかったのですが、カエルやザリガニから出汁をとったラーメンもあったらしく、雑誌に取り上げられていました。
まだまだ、早稲田周辺のお店の100分の1も紹介出来てませんが、今回はここまでにしたいと思います。チョコとんで有名だった「フクちゃん」やメニューがカレーとスタライ(スタミナライスのこと)の2種類しかなかった「キッチンカナリア」など有名店のいくつかはもう閉店してしまったそうです。でもその代わり新しいお店が一杯出来ているのだと思います。1日の生活はその人の人生そのものと相似形を成すそうで、1日の中心となるおいしいランチをとることが人生において最も重要であるといえるのではないでしょうか。早稲田には安くておいしくて、個性的な食べ物屋さんが本当にたくさんあります。皆さんもぜひ自分のお気に入りのお店を見つけてください。