自動ドアをくぐった先の世界に圧倒された。大量の本、本、本…。本の回廊が私を出迎えた。中央図書館の地下にある書庫を初めて利用した時の感想は、「早稲田は本の杜」だ。
具体的なイメージがあったわけではないが、中学生のころから「歴史に関わる仕事がしたい」「博物館でモノを扱う仕事がしたい」などと思っていた。憧れの第一文学部に嫌われ、第二希望の教育学部に入学したが、「教育学部でも、歴史の勉強はできる!」と、私は考古学研究会というサークルに入った。
考研では毎週、自分の興味がある課題や分野について発表したり、議論したりする。詳しい発表や議論をするためには、図書館で本を読み、いろいろ調べる必要がある。早稲田のキャンパス内には、中央図書館、戸山図書館などの大型図書館に加え、教育学部や社会科学部の学生読書室など、図書館がたくさんあった。そこはとても居心地がいい場所で、一般的な本から、やや専門的な本まで、それはたくさんの本が並んでいた。しかし、いざ発表となると、それでも足りない情報が出てくる。もっと詳しい情報はないものか。
図書館の地下にある「書庫」の存在を知ったのは、そんなときだ。カウンターで受け付けをし、荷物をロッカーに入れて、階段を下りる。自動ドアをくぐった先には、視界全面に、本が並んでいた。天井までの本棚がいくつも並び、それも、かなりの広さである。大量の情報に圧倒されて、閉館時間までそこにこもっていた。
在学中は何度も足を運んだ。俗にいうマニアックな本が大量にあった。明治や大正期に著された、その道では貴重な文献も、すぐ手に取ることができた。地方の遺跡の報告書や、過去に出版された学術雑誌もすべてそろっていた。今まで出版された日本中の本がそこに集結しているといっても過言ではないくらいだった。新しい世界が強烈に開かれた感じがした。
早稲田の杜には大量の本がある。むろん、本だけではない。いろいろなコト、モノ、ヒトが住んでいる。自分の持っている、あるいは自分の知らない何かを開かせてくれる場所である。その魅力に必死に挑戦してみても、損はない。