2年前に自分の書いた、「早稲田での思い出」を読み返してみると、-「皆と他愛もない話をした学食。」「早慶レガッタで母校を応援した隅田川。」-というものが挙がっていた。学食のそばに大隈庭園があり、そこは学生が芝生に寝転がって自由に談笑できる空間だった。入学したてのギクシャク感も少しずつ取れ始めた4月の陽光の下、何となく気の合う連中が集まり、新しい何かを欲していた我々は、「早慶レガッタ、行く?」「いいね。」的なノリで、男女6人、桜も散った日曜日、隅田川に集まったのだった。
隅田川周辺は人で溢れていた。ゴールはどこだ、どこか観るのに良い場所はないかと探す我々の横で歓声。両校のボートが近づいているのだった。もうここは自分一人でも場所を見つけて観るしかないと、人混みをかき分けて覗き込んだときには両艇は遥か先。「どっちが勝ったの?早稲田勝ったの?」周囲の様子から早稲田の勝利を知った。「ゴール見た?観られた?」と皆が互いに言う始末。誰も早稲田のゴールを見ていなかった。
そんな早慶レガッタであったが、とても楽しかった。早稲田に入って初めて母校を意識したイベントであったからだろうか。春らしからぬ灰色の空。川面に吹く肌寒い風。歓声。どよめき。駅へ向かう人の影。目を閉じると、そのすべてが鮮やかによみがえるのだ。
輝ける未来が待っている。そんな気持ちもよみがえるのだ。